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現代医師の読解力に疑問:別冊!ニューソク通信「内部告発で医療界に激震 安易な診断書交付が悲劇を生む化学物質過敏症の深い闇」の動画内容がちょっと酷い

 

www.youtube.com

 

 

この記事を書いた理由

別冊!ニューソク通信というYouTubeチャンネルの動画「内部告発で医療界に激震 安易な診断書交付が悲劇を生む化学物質過敏症の深い闇 横浜副流煙裁判との共通点とは…? に大きな疑問」を視聴して、ちょっとこれは酷いんじゃないかと思ったので書いておきます。

 

誤解がないように付け加えておきますが、ニュー速通信社は、須田慎一郎氏がユニークな語り口で裏社会の実情やリアルタイムでの政治の話をしてくれるので、いつも動画配信を楽しみにしているチャンネルです。

 

 

だからこそ、この動画はとても残念でした。

 

長くなったので取りあえず動画概要と結論だけ。詳細は後ほど追加で記載します

追加内容(疑問点)は青文字で記載。あまりにも長くなるため、疑問点の詳細は別エントリとしてアップします。

※横浜副流煙裁判については触れていません。

 

結論


先に結論を述べます。

 

内部告発の基となった宮田医師からの「手紙」に対する船越医師と黒藪氏の解釈(読解力)に問題があります。

医療ビジネスを暴きたいという黒藪氏およびニュー速通信社の目的は理解するものの、この告発の内容は、Aさんという1件の事例と船越医師個人の体験のみであり、しかもその内容に疑問が大きいため、告発内容としてはお粗末と言わざるを得ません。

この件は、船越医師と黒藪氏の勘違い、あるいは勇み足だったのではないでしょうか。

ニュー速通信は、動画を撮るよりも先に告発の基となった宮田氏の手紙文を確認するべきでした。

 

内部告発というショッキングなワードが付されているため、動画の視聴者が内容を精査せず船越医師の告発内容を鵜呑みにする危険性があります。

また、その影響で何かしら宮田医師の医療業務が阻害されることがあれば、本当に化学物質過敏症に苦しんで宮田医師に診察をしてほしいと思っている人々に不利益が生まれる可能性があります。

 

動画内容

 産婦人科医であり化学物質過敏症も診断しておられる船越典子医師が、化学物質過敏症の診療医である宮田幹夫医師の診断に汚点がある(診断が安易である)という内部告発をし、それを黒藪哲哉氏がWebニュース記事として発信。

 

 宮田医師は、横浜副流煙裁判の際に、日本禁煙学会の作田学理事長と共に意見書を提出して原告を支援した経緯がある。

 内部告発の実例患者Aさんは、この裁判とは無関係。

 

 その船越医師と黒薮哲哉氏に、ニュー速通信の須田慎一郎氏が直接詳細をインタビューしたもの。

 

動画内インタビュイー

 船越典子医師 典子エンジェルクリニック院長、京都府立医科大学研修員
 宮田幹夫医師 そよ風クリニック院長、北里大学名誉教授
 黒薮哲哉氏  ジャーナリスト。著書に『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他


動画の元となった黒藪氏のニュース記事

医師が内部告発、宮田幹夫・北里大学名誉教授の医療行為の評価、化学物質過敏症の安易な診断書交付を問題視 黒薮哲哉 : デジタル鹿砦社通信

 

黒藪氏記事より抜粋

>>
この裁判で原告は、宮田医師が交付した診断書も裁判所に提出した。宮田医師はその診断書に化学物質過敏症の病名を付していた。

この診断書自体が患者の自己申告による根拠に乏しいものだという証拠はなにもないが、宮田医師について筆者は、容易に化学物質過敏症の診断書を交付してくれる医師であるという評判をたびたび聞いていた。

11月に、化学物質過敏症の治療を行っているあるひとりの医師から筆者のもとに内部告発があった。宮田医師が安易に化学物質過敏症の病名を付した診断書を交付するというのだ。筆者は、告発者の酒井淑子(仮名)医師から、その裏付け証拠を入手した。

-中略-

化学物質過敏症の診断は一筋縄ではいかない。診断に関する疑問が浮上した以上、学閥や派閥を排除してオープンな議論や論争を行うべきだろう。科学の世界に上下関係はないはずだ。さもなければ2次被害に繋がりかねない。
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動画(および黒藪氏の書いた記事)に対する疑問点

以下、私がこの動画に感じた疑問点です。

 

●船越医師の読解力に疑問

 

●船越医師の化学物質過敏症は治ったのか?

 ・「治った」の定義は何か(動画内での発言が曖昧なため、明確にしたい)

 

●宮田医師の診断書発行は違法であるのか
 ・診断書発行の違法性とは何か → 医師法20条に規定
 ・医師法20条に違反しているか?

 

●宮田医師の診断は不正であるのか
 ・精神性のものだと判断していたのか?

 

●宮田医師は報酬を目当てに診断書を発行したのか

 

●「エイヤッ」と診断書を書いたのはなぜか?


●宮田医師は告発されることを夢にも思っていなかったのか?

 

○黒藪氏の記事への疑問:化学物質過敏症を診断する医師の中に、学閥や派閥があるのか?

 

●患者Aさんの診断に関して、船越医師は宮田医師にどんな内容の問合せを送ったのか?

 

●船越医師は、自身の化学物質過敏症が治った、あるいは症状がなくなった、または軽減したことを、宮田医師に話したのか?

 

●患者Aさんの診断に対する宮田医師と船越医師の違い


化学物質過敏症に対しての知見が深いのはどちらの医師か?

 

 

内部告発の根拠となった宮田医師からの手紙

 

手紙1

手紙2

手紙3

 

この件に対する私の考え

 

 船越医師は元々産婦人科が専門の医師で、化学物質過敏症の診断・治療は、ご自身の発症後に宮田医師に教わったという話です。つまり元々の専門は婦人科領域で、精神疾患や不安症状に対して、それほど深い理解はお持ちでないと推察されます。


 船越医師が不安症状に対してだけでも十分に理解していれば、宮田医師の書いた不安障害やうつ病についての文面を誤読することはなかったでしょう。

 また、船越医師は医師、つまり理系の方なので、恐らく文章理解よりも数字の方がお得意なのではないでしょうか。それでも手紙を誤読して内部告発をするというのは、少々問題ですよね。

 

 そしてニュース記事を発信し、著書も何冊も出しておられる黒薮氏がこの程度の読解力を呈することは、かなり問題があります。下手をすれば、ご自身が『名医の追放』を行うことになりかねません。

 黒薮氏は医療に関わる社会問題を扱ってきたジャーナリストで、何冊もご著書のある方ですが、医療専門のジャーナリストではないようです。

 あえて苦言を申しますが、プロのジャーナリストが現代医療について記事を書くのであれば、関連する領域それぞれの専門医と対等に会話できる程度の知識が必要です。つまり複数の領域の知識が必須ということです。そして現在、医療において関連している領域は一つや二つでないことを知っていだきたいと思います。

 また、このような問題で告発の具体例がたった1例しか手元にないものを記事にしてしまったのは、ジャーナリストとしてだいぶ勇み足だったと言わざるを得ません。少なくとも、もう少し周辺を取材するべきでした。

 

 ニュー速スタッフや須田氏は、 おそらく黒薮氏が書かれたネット記事を読んでこの動画を企画し作成したのだと思いますが、問題となる宮田医師の手紙を最初によく読む必要がありました。

 もしも事前にこの手紙を読んでいて、それでもこの動画を作成したのであれば、今まで須田慎一郎氏を陰ながら応援してきた私としては忸怩たるものがあります。

 

 ただ、読解力のなさについては、この方々だけのことではないようです。
以前から、現代日本人の読解力にはかなり問題があると言われており、それに関して軽症を鳴らす本もいくつか出ているほどです。

 日本の国語教育に大きな問題があり、それがこの騒動の一つの遠因となっているのではないでしょうか。